ぺんしるブログ

行き先不安な現代社会。僕たちは社会科で何を学んできたのか。

第2号 答えはちゃんとあった

学習指導要領というものをご存知だろうか。

 

これは文部科学省により、だいたい10年に一度くらいに出されるもので、

今後の教育の方針を示した計画書とも呼ぶべきものである。

我々が覚えさせられた教科書も、この学習指導要領の方針に基づいて編集され、

検定を受けて学生の元に届くのである。

ちなみにこの学習指導要領、法的な拘束力があり、

これに則らない指導を行った場合、罰則を課されることもあるのだ。

過去にはそれで裁判になった事例もあるという。

そして、この指導要領による規定は各教科にも及んでいる。

もちろん私が大学時代に専攻した社会科教育も含んでいる。

前稿で教育の方向性をどうすべきかと書いたが、実はその答えは、

この指導要領を見ればきっちりと書かれているのである。

平成29年に告示された「中学校学習指導要領解説 社会編」を見てみよう。

学習指導要領は、書店で購入できるほか、文科省のホームページから内容を閲覧することもできる。

第2章 社会科の目標及び内容

『社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,

広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家

及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成する

ことを目指す。』

 

何となく言いたいことは分かるような、そんな目標である。

そしてこの目標を掘り下げることで、教科としてどんな資質の育成を狙っているのか、

それが学校教育全体にどのように関連してくるのかが読み取れる。

 

「社会的な見方・考え方」という言葉が出てきた。

少し注釈を加えるならば、これは社会で起きていること(起きたこと)の意味や意義、

関連性を学ぶことを示している。

それを学ぶためのフィールドとして、中学校社会科では地理・歴史・公民の

大きく3領域が設定されているのである。それぞれの分野の中で課題を追究し、

問いを解決していく活動が求められる。

 

そして「民主的な国家及び社会の形成者」という言葉も出てきた。

これも非常に大切な言葉であると考えられる。

実際十分に実現できているかは別として、現代の私たちは民主主義の政治制度を

採用している。主権は国民にあるという前提の下、選挙によって民衆の代表者である

議員が選ばれる。民主主義社会の基盤となるのは間違いなく国民自身なのだから、

一人ひとりが社会の形成者であるという意識と知識をもたせるべきである、

ということだろう。民主主義はしばしば多数決に完結しがちであるが、

数の多い意見が常に最善とは限らない。20世紀に登場し恐ろしい政策を行った

指導者の中には(形式的なものも含め)国民からの選挙を通して選ばれた者もいた

そうである。そういう出来事を繰り返さないためにも、

社会科は主権者としての判断力を育てるための教育をする必要があるのですよ、

と言っているのである。

 

社会科では、こうした社会の形成者にとって必要な力のことを

「公民的資質」と呼んでいる。地理・歴史・公民の公民と同じ字である。

3分野で並べられると、公民=政治・経済という印象が強いが、

「公民的資質」においては、公民とは地理的背景や歴史的背景も含んだうえで、

現代社会を分析する力と捉えた方がよいだろう。

このように社会科の目標とは、民主主義社会を形成するための公民としての資質を

育てる教科なのだとまとめることが出来る。そしてそれを身につける手段として、

中学校社会科では地理・歴史・公民の3つのフィールドが設けられている。

 

では、これら3つの関係はどうなっているのだろうか。

学生時代に学んだときには、どうしてもそれぞれが切り離されがちだった。

「俺は地理はまだ点数とれるんだけど、歴史は全然分かんないんだよね。」

そんな会話を友人としていた気もする。

しかしこれらの分野も掘り下げていけば、きっと関係が見つかるに違いない。

次稿では、社会科を構成する大きな3分野の関係について迫っていこうと思う。