ぺんしるブログ

行き先不安な現代社会。僕たちは社会科で何を学んできたのか。

第3号 積み木or座布団

積み木を積むか、それか座布団を重ねるか。

 

中学校社会科の進め方は主にこの2つである。どういうことか。

 

中学校社会科は大きく地理・歴史・公民の3分野が設定されているが、

それを取り扱う順番によって、「座布団型」「π(パイ)型」と呼ばれる

2つの方法に分かれるのである。

 

座布団型社会科

まず初めに座布団型であるが、これは1年生のときに地理

2年生のときに歴史、そして3年生のときに公民を扱う方法である。

3学年あるから、1年ごとに地理・歴史・公民の学習がなされる。

下の図のように表すと、重ねた座布団のように見えるからそう呼ばれる。

地理分野と歴史分野が入れ替わることもあるが、地理分野を1年生に設定する場合がほとんどらしい。

π型社会科

一方で「π(パイ)型」とは何か。まず下の図を見て欲しい。

実際は1つの単元だけではなく、いくつかのまとまり(例:地理で九州地方と中国・四国地方の学習を終えたら、歴史の江戸期の諸改革を学ぶなど)で区切られることも多い。

この積み木を積んだような形であるが、ちょうどギリシア文字のπ(パイ)の形に

似ているところから、π型と呼ばれるようになった。

1・2年生のときに歴史分野と地理分野を交互に学習し、3年生で公民を学ぶ。

ただ実際は、歴史分野は3年生になっても学習が終わらないため、

3年生の夏頃までは歴史、それ以降になって公民に取り掛かるケースが多い。

「変形π型」というべきだろうか。

 

現在の中学校では、座布団型よりもπ型(変形)を採っている学校が圧倒的多数らしい。

みなさんの学校ではどうだったか。

2つの方法に明確に優劣があるわけではないが、これらが生まれてきた背景には

社会科という教科そのものが辿ってきた変遷がある。

 

国の教育の基本方針を示したものとして、学習指導要領というものがあるよ、

というお話は前稿でさせていただいたが、それ自体も実は終戦まもない頃から

作成され続けてきた。

もうすぐ80年が経とうとしていると思うと意外と古い歴史がある。

その中で昭和33(1958)年の改訂の際、教育課程審議会が開かれたのだが、

それを踏まえて、1年生で地理、2年生で歴史、3年生で公民を学習する、

座布団型社会科が原則とされた。積み木よりも座布団が先なのである。

 

その後、昭和44(1969)年の学習指導要領の改訂では社会科は、

「地理的分野および歴史的分野の基礎の上に公民的分野を展開する」という

基本構造が示され、同時に地理と歴史を並行して学習し公民へ繋げていく、

π型社会科への転換が示された。

地理分野と歴史分野を互いに関連させることで、公民分野の下地にしよう

方針に切り替わったのだ。

現在、ほとんどの中学校でπ型学習が行われ、一部ではあるが座布団型学習が

残っているのは、このような背景がある。

 

さて、以上2つの形態を見てきたが、π型社会科をスタンダードな手法として

見た場合、例えば次のような疑問点が挙げられるだろう。

・π型社会科では、地理分野と歴史分野の関連は十分に保てているのか。

・地理分野と歴史分野の学習は、公民分野の基盤としての役割を果てせているのか。

次稿以降では、それぞれの分野の性格や役割を大まかに見て行こうと思う。

 

参考:

村山朝子「社会科のなかで地理教育を考える」『地理教育総説記事』Vol.2 日本地理学会(2007)